大人になって発達障害と診断された場合の初診日の考え方
目次
「発達障害と診断されたのは大人になってからです。初診日も診断日になりますか?」
「子どもの頃に相談や受診をした記憶がありますが、どの日を初診日にすればよいでしょうか?」
「先にうつ病と診断され、後から発達障害が分かった場合はどうなりますか?」
大人になってから発達障害と診断された方の障害年金申請では、診断が確定した日と初診日が一致しないことがあります。初診日は、加入していた年金制度、保険料納付要件、障害認定日を左右する重要な日です。受診歴を確認せず、診断日だけで判断しないことが大切です。
✅ この記事で分かること
- 大人の発達障害における初診日の原則
- 診断日・発病日・初診日の違い
- 幼少期に相談や受診歴がある場合の考え方
- うつ病などの二次障害が先に診断された場合の注意点
- 初診日を確認・証明するための手順
💡 この記事の結論
成人後に発達障害と診断された場合も、診断確定日がそのまま初診日になるとは限りません。原則として、障害年金を請求する発達障害について、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日を確認します。幼少期の受診、成人後の精神科・心療内科受診、二次障害の受診が関係することもあるため、受診目的や症状の連続性を個別に整理する必要があります。
大人の発達障害における初診日の基本
初診日は「初めて診断名が付いた日」ではありません
障害年金の初診日とは、原則として、障害の原因となった傷病について初めて医師または歯科医師の診療を受けた日です。発達障害は生来の特性とされますが、初診日が自動的に出生日になるわけではありません。
日本年金機構の障害年金講座でも、発達障害は、自覚症状があって初めて診療を受けた日が初診日になると説明されています。成人後にASDやADHDと診断された場合は、診断確定日より前の受診がなかったかを確認します。
発病日・初診日・診断日は別のものです
| 日付 | 考え方 |
|---|---|
| 発病日 | 症状や特性が現れたと考えられる日。発達障害では幼少期までさかのぼることがあります。 |
| 初診日 | 請求する傷病について初めて医師等の診療を受けた日。 |
| 診断日 | 検査や経過観察を経て、発達障害の診断名が付いた日。 |
たとえば、30歳で仕事上の困難から心療内科を初めて受診し、数か月後にADHDと診断された場合、受診内容に連続性があれば、診断日ではなく最初に心療内科を受診した日が初診日となる可能性があります。
成人後に診断された場合の初診日をケース別に確認
ケース1:成人後に初めて医療機関を受診した
幼少期から忘れ物や対人関係の苦手さがあっても、医療機関を受診せず、成人後に初めて精神科や心療内科を受診した場合は、その成人後の受診日が初診日となるのが基本です。
学校の相談室、発達支援センター、職場の上司や産業保健スタッフへの相談だけでは、通常、医師等の診療を受けた日には当たりません。ただし、相談先から医療機関につながった場合は、その紹介記録が受診経過を整理する資料になることがあります。
ケース2:幼少期に発達相談や児童精神科の受診歴がある
幼少期に児童精神科、小児神経科、発達外来などで、発達の遅れ、落ち着きのなさ、対人面の困難について診療を受けていた場合は、その受診が初診日となる可能性があります。診断名が当時付いていなかった場合でも、現在の発達障害と受診内容に関連があれば確認が必要です。
一方、風邪やけがなど、発達障害と関係のない小児科受診が初診日になるわけではありません。医療機関名だけでなく、受診理由、診療科、当時の症状を確認しましょう。
ケース3:うつ病や不安障害で先に受診した
職場不適応や対人関係の困難から、最初はうつ病、不安障害、適応障害などと診断され、後に背景として発達障害が分かることがあります。この場合、先行する精神疾患の初診日が発達障害の請求における初診日になるかは、症状や受診経過の連続性、傷病間の関係、医師の記録などを踏まえて個別に確認されます。
「発達障害と診断された日」と「うつ病で初めて受診した日」のどちらかを、診断名だけで選ぶことは避けましょう。詳しい注意点は、発達障害の二次障害で障害年金を申請する際の注意点でも解説しています。
ケース4:知的障害を併せ持っている
発達障害と知的障害が併存する場合は、傷病の捉え方や初診日の扱いについて慎重な確認が必要です。発達障害については初めて診療を受けた日が原則ですが、知的障害には異なる取扱いがあります。療育手帳の有無だけで自己判断せず、病歴全体を整理してください。
初診日が重要な3つの理由
初診日に加入していた年金制度が対象範囲を左右する
初診日に国民年金へ加入していた場合は障害基礎年金、厚生年金へ加入していた場合は障害厚生年金が基本です。障害基礎年金は1級・2級、障害厚生年金は1級・2級に加えて3級や障害手当金が検討対象となります。
保険料納付要件を初診日の前日時点で確認する
障害年金では、原則として初診日の前日時点で、所定の保険料納付要件を満たす必要があります。成人後のどの日が初診日になるかによって、納付記録の確認範囲が変わる可能性があります。
障害認定日の起点になる
障害認定日は、原則として初診日から1年6か月を経過した日です。そのため、診断確定日ではなく、正しい初診日を確認することが、いつの障害状態を診断書で証明するかにも関係します。
大人の発達障害で初診日を確認する手順
1.医療機関・相談先を時系列で書き出す
幼少期から現在までを振り返り、児童精神科、発達外来、精神科、心療内科などの受診歴を整理します。学校の相談、発達検査、健診、紹介状の有無も併記すると、最初の医療機関を探しやすくなります。
2.最初の医療機関に記録の有無を確認する
初診時と現在の医療機関が異なる場合は、通常、最初の医療機関が作成する「受診状況等証明書」で初診日を証明します。カルテが残っているか、当時の受診内容や前医の記載があるかを確認します。
3.カルテがない場合は参考資料を探す
古い受診でカルテが廃棄されている場合は、「受診状況等証明書が添付できない申立書」とともに、次のような資料を検討します。
- 次の医療機関に残る紹介状や前医の記載
- お薬手帳、診察券、領収書
- 健康保険の給付記録
- 精神障害者保健福祉手帳等の申請時資料
- 当時の受診を知る第三者による証明
どの資料で認められるかは個別事情によります。証拠が一つ見つからないだけで諦めず、受診経過全体から検討しましょう。障害年金の初診日を証明しにくい場合の対処法も参考になります。
4.診断書と申立書の時系列を一致させる
受診状況等証明書、現在の診断書、病歴・就労状況等申立書で、初診日や転院経過に食い違いがないか確認します。本人が医療機関の書類を訂正せず、相違があれば作成した医療機関へ確認してください。
大人の発達障害の初診日で避けたい判断
- 診断名が付いた日を自動的に初診日とする
- 生まれつきの特性だから出生日を初診日とする
- 子どもの頃のすべての小児科受診を初診日と考える
- 先に診断されたうつ病と発達障害を必ず同一傷病、または別傷病と決めつける
- 厚生年金加入中の受診だけを選んで申し立てる
初診日は、希望する年金制度に合わせて選べるものではありません。事実に基づいて最も早い関連受診を確認し、資料間の整合性を保つ必要があります。発達障害全体の制度は、大人の発達障害で障害年金を申請する条件と注意点をご覧ください。
よくあるご質問
Q1. 30代でADHDと診断されました。初診日は診断日ですか?
診断日とは限りません。診断確定前に、同じ困りごとや関連症状で精神科・心療内科などを受診していれば、その最初の受診日が初診日となる可能性があります。初回受診時の主訴、検査までの経過、医師の記録を確認します。
Q2. 子どもの頃から特性があれば、出生日が初診日になりますか?
発達障害では、原則として出生日ではありません。生来の特性があっても、障害年金上は、その発達障害について初めて医師等の診療を受けた日を確認します。知的障害が併存する場合は取扱いが異なる可能性があります。
Q3. 学校のカウンセラーに相談した日は初診日ですか?
通常、相談だけでは初診日になりません。初診日は医師または歯科医師の診療を受けた日です。ただし、学校医による診療があった場合や、相談記録から医療機関への紹介経過が分かる場合は、内容を確認する必要があります。
Q4. 小児科を受診したことがありますが、日付を覚えていません。
まず、何の症状で受診したかを確認しましょう。風邪など発達障害と無関係の受診は、通常その初診日にはなりません。発達相談等で受診していた可能性があれば、家族への確認、母子健康手帳、診察券、紹介状、次の医療機関の記録を探します。
Q5. うつ病の治療中に発達障害が判明しました。どちらの初診日を使いますか?
診断名だけでは決められません。うつ症状と発達特性の関係、受診経過の連続性、現在の請求傷病、医師の見解などを踏まえて整理します。うつ病の初診日を当然に切り離したり、必ず同じ初診日としたりすることは避けてください。
Q6. 初診の病院でカルテが廃棄されていました。申請できませんか?
ほかの資料で初診日を確認できる可能性があります。受診状況等証明書が添付できない申立書に加え、紹介状、次の医療機関の記録、診察券、領収書、健康保険の記録、第三者証明などを検討します。必要資料はケースにより異なります。
Q7. 初診日が会社員時代なら必ず障害厚生年金になりますか?
会社員だった時期ではなく、正しく確認された初診日に厚生年金へ加入していたかで判断します。成人後の診断日を初診日に置き換えることはできません。年金加入記録と受診歴を照合し、保険料納付要件も確認します。
大人の発達障害の初診日は早めの確認が大切です
大人になってから発達障害と診断された方は、幼少期からの特性と医療機関の受診歴を分けて整理することが重要です。初診日の確認を誤ると、対象となる年金制度や納付要件、障害認定日の判断にも影響します。
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