20歳前障害年金の所得制限|知的障害の受給者が知るべき点
目次
「就職して収入が増えたら、障害年金は止まるのでしょうか」
「親と同居していると、親の所得も審査されますか」
「給与の年収と、所得制限の“所得”は同じですか」
知的障害により20歳前傷病の障害基礎年金を受けている方やご家族にとって、所得制限は将来の生活設計に関わる大切な問題です。制度を正しく理解し、通知書や所得証明書を早めに確認しておきましょう。
✅ この記事で分かること
- 20歳前傷病の障害基礎年金に所得制限がある理由
- 令和8年度の所得制限額と支給停止の範囲
- 本人・親・配偶者のうち、誰の所得が審査されるか
- 給与の「年収」と判定に使われる「所得」の違い
- 働き始めたときや支給停止になったときの注意点
💡 この記事の結論
20歳前傷病の障害基礎年金では、受給者本人の前年所得が一定額を超えると、年金の2分の1または全額が支給停止されます。親や配偶者の所得、世帯全体の年収で判定される制度ではありません。また、判定に使われる「所得」は給与の額面年収そのものではないため、源泉徴収票や課税証明書で確認することが重要です。
20歳前障害年金に所得制限が設けられている理由
知的障害は、一般に出生時または発達期から現れるため、初診日が20歳前と扱われるケースが多くあります。20歳前に初診日がある傷病による障害基礎年金は、国民年金への加入前であっても、障害等級などの要件を満たせば対象になります。
一方、年金加入や保険料納付を支給要件としていないことから、通常の障害年金にはない本人所得による支給制限が設けられています。知的障害だから所得制限があるのではなく、「20歳前に初診日がある傷病による障害基礎年金」であることが理由です。
知的障害の受給条件や等級、申請上の注意点は、知的障害で障害年金を受給するための総合ガイドでも詳しく解説しています。
令和8年度の20歳前障害年金の所得制限額
扶養親族等がいない場合の基準は、次のとおりです。金額は令和8年4月時点の日本年金機構の公表内容に基づきます。
| 受給者本人の前年所得 | 支給の扱い |
|---|---|
| 3,761,000円以下 | 全額支給 |
| 3,761,000円を超え4,794,000円以下 | 年金額の2分の1を支給停止 |
| 4,794,000円を超える | 全額支給停止 |
「2分の1停止」は、所得が基準を超えた分だけ減額される仕組みではありません。該当する期間の年金額の2分の1が停止されます。1級と2級のどちらを受給している場合も、所得区分に応じて支給額が変わります。
所得制限が反映される期間
前年所得による判定結果は、その年の10月分から翌年9月分までに反映されます。たとえば、ある年に就職して所得が増えた場合、その所得を基に翌年10月分以降の支給が調整される可能性があります。
働き始めた月から直ちに所得制限で年金が止まるわけではありません。ただし、障害状態の確認を伴う更新では、所得制限とは別に、就労状況や日常生活能力が審査資料の一つになる場合があります。
扶養親族がいる場合は基準額が加算される
扶養親族がいる場合、所得制限額には原則として1人につき38万円が加算されます。老人控除対象配偶者または老人扶養親族は48万円、特定扶養親族または一定の控除対象扶養親族は63万円が加算されます。
誰が税法上の扶養親族に該当するかによって基準が変わるため、個別の金額は課税証明書などを用意して年金事務所や市区町村の窓口で確認すると安心です。
所得制限で確認されるのは本人の所得
審査対象は、障害基礎年金を受給している本人の前年所得です。本人が親と同居していても、親の所得や世帯年収を合算して判定するものではありません。配偶者に高い収入がある場合も、配偶者の所得だけを理由に20歳前障害年金が停止されるわけではありません。
これは、障害児福祉手当など、扶養義務者の所得も確認する別の福祉制度とは異なる点です。複数の制度を利用している場合は、それぞれの所得制限を分けて確認してください。
給与の「年収」と「所得」は同じではない
所得制限で使われる「所得」は、勤務先から受け取った給与の額面合計そのものではありません。給与収入の場合は、通常、給与収入から給与所得控除を差し引いた給与所得を基に、制度上認められる控除を反映して判定します。
そのため、「年収が376万1,000円を超えたから半分停止」と単純には判断できません。給与以外に事業所得や不動産所得などがある場合は、それらも確認が必要です。住民税の課税証明書や所得証明書に記載された内容を基に、窓口で判定所得を確認するのが確実です。
障害年金そのものは所得判定に含まれる?
障害年金は非課税所得です。そのため、受け取った障害年金そのものが、20歳前障害年金の所得制限を判定する所得に加算されるわけではありません。ただし、給与や事業収入など、本人にほかの所得がある場合は判定対象になり得ます。
知的障害の受給者が働くときに確認したいポイント
就労しただけで直ちに支給停止になるわけではない
就職した事実だけで、所得制限による支給停止が決まるわけではありません。前年所得が基準内であれば、所得制限上は全額支給の対象です。
ただし、障害年金の更新では、仕事内容、勤務時間、職場の配慮、援助の内容、欠勤状況、仕事以外の日常生活などが総合的に確認されます。所得制限の判定と障害等級の審査は、別の問題として整理する必要があります。
源泉徴収票と課税証明書を保管する
給与額が変わった場合や副業を始めた場合は、次の資料を保管しておきましょう。
- 源泉徴収票
- 確定申告書の控え
- 住民税の課税証明書または所得証明書
- 扶養親族の状況が分かる資料
- 日本年金機構から届いた支給額変更通知書や支給停止通知書
所得情報は原則として市区町村から日本年金機構へ提供されますが、情報を確認できない場合などには届出を求められることがあります。届いた案内を放置せず、提出期限を確認してください。
支給停止は受給権の消滅とは限らない
所得制限による支給停止は、その期間の支払いが全部または一部止まる仕組みです。障害年金の受給権そのものが直ちに消滅するわけではありません。翌年の所得が基準内に下がれば、その所得を基にした次の判定期間では支給が再開される可能性があります。
一方、更新時に障害等級に該当しないと判断された場合の支給停止は、所得制限とは理由が異なります。通知書が届いたら、まず停止理由と対象期間を確認しましょう。
所得制限で困らないための確認手順
- 1.受給している年金の種類を確認する:年金証書で20歳前傷病による障害基礎年金かを確認します。
- 2.前年所得を確認する:年収だけで判断せず、課税証明書などを用意します。
- 3.扶養親族の有無を確認する:人数と区分により限度額への加算が変わります。
- 4.判定期間を確認する:前年所得が10月分から翌年9月分に反映される点を押さえます。
- 5.通知書の理由を確認する:所得制限なのか、更新による等級変更なのかを区別します。
秋葉原・神田障害年金申請サポートでは、社会保険労務士の佐々木淳が、所得制限を含む障害年金のご相談に対応しています。千代田区・台東区・文京区・上野周辺の来所相談に加え、Zoom・電話・LINE・メールで全国からご相談いただけます。
20歳前障害年金の所得制限に関するよくあるご質問
Q1. 親の年収が高いと、知的障害の障害年金は止まりますか?
原則として、親の年収だけを理由に20歳前傷病の障害基礎年金が止まることはありません。所得制限で確認されるのは受給者本人の前年所得です。ただし、ほかの福祉手当では扶養義務者の所得が審査される場合があります。
Q2. 給与収入が376万1,000円を超えたら半額停止ですか?
給与の額面年収だけでは判断できません。376万1,000円は「所得」の基準です。給与収入から給与所得控除などを反映した後の所得を確認するため、課税証明書や所得証明書を基に窓口へ確認してください。
Q3. 障害年金を受け取った金額も本人所得に含まれますか?
障害年金は非課税であり、障害年金そのものは所得制限の判定所得に加算されません。一方、給与所得、事業所得、不動産所得など、本人のほかの所得は判定に影響する可能性があります。
Q4. 就職したらすぐに障害年金が半分になりますか?
就職しただけで直ちに半分になるわけではありません。前年の本人所得を基に、10月分から翌年9月分までの支給区分が決まります。ただし、更新時には所得制限とは別に、就労実態や日常生活の状況が確認されます。
Q5. 所得制限で全額停止になったら、翌年もずっと停止ですか?
毎年の前年所得に基づいて判定されるため、ずっと停止とは限りません。翌年の所得が基準内に下がれば、その所得が反映される次の期間から、全部または一部の支給が再開される可能性があります。
Q6. 一人暮らしを始めると所得制限額は変わりますか?
一人暮らしか親と同居かだけで基準額が変わるわけではありません。本人の前年所得と、税法上の扶養親族の有無・区分が基準になります。住民票上の世帯構成だけで判断しないよう注意してください。
Q7. 支給停止の通知に納得できない場合はどうすればよいですか?
まず通知書で、所得制限による停止か、障害状態の審査による停止かを確認しましょう。所得額、扶養親族、控除の反映に疑問がある場合は、課税証明書などを用意して年金事務所へ照会してください。手続きの選択に迷う場合は、早めに社会保険労務士へ相談する方法もあります。
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